食品の機能ユニットに注目科学的エビデンスのあるさまざまな生活提案を取り入れている。そのなかで血管年齢の制御や認知症予防に効果のある新しいアプローチとして注目しているのは,炭水化物,たんぱく質,脂質といった三大栄養素の機能を補う成分をバランスよく摂取する「機能ユニット」の考え方だ。例えば,精米される前の玄米は,発芽するための機能がひと単位で揃っている「お米としての機能ユニット」ということができます。白米のエネルギーを分解する機能を持つ栄養素も,玄米のなかにはあります。そのため白米を食べる時は,玄米から省かれた機能ユニットを補う栄養素を,おかずから摂ることが理想です。糖類や炭水化物など,エネルギーだけを重視した食事が増えれば増えるほど,このバランスは崩れ,それが血管年齢や認知機能に大きく影響します。動物実験で,カロリー制限をすると加齢現象が抑制されるのも,こうした食品の機能バランスが改善されている可能性があります。現在は,これがアンチエイジング医療のなかで勧める食事改善の理論的背景になると考えています。人々が避けることができないエイジングを,食事や運動といった生活習慣を最適化することでコントロールする。実際の臨床現場での成果を医療に応用する白澤教授の取り組みは,アンチエイジング医療の新たな姿を示すものといえそうだ。


カロリス仮説。摂取カロリーの過多は加齢を促進するが、総摂取カロリーを通常の65%程度に落とすと、多くの生物で寿命延長が見られる−という米国での研究結果が始まりだ。

 2000年に入り米国の研究でカロリスによってサーチュインという長寿にかかわる遺伝子群が活性化し、細胞の寿命を延ばそうとすることが分かってきた。「この長寿遺伝子はいわば主電源。カロリスでスイッチがオンになり、長生きするよう指令を出す」。老化原因の一つとされる細胞死(アポトーシス)を抑制したり、エネルギーを生産するミトコンドリアの働きを高めたりするわけだ。

ただ、ご飯を食べないのはなかなか大変。カロリスをしなくてもカロリスと同じ効果を持つものはないのか。米国の研究者が探した結果、赤ワインに含まれるポリフェノールの一種、レスベラトロールがサーチュイン遺伝子のスイッチをオンにすることが分かった。

 その後、レスベラトロールを使った新薬、化粧品、サプリメントが次々に発売され、糖尿病や炎症予防などの効果が期待されている。坪田さんの研究チームも、目の中でサーチュインを活性化させることを確認した。

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長寿の秘訣

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カロリスでは食物を取らないのではなく野菜、大豆、魚中心の食事で栄養バランスを維持しながら総摂取カロリーを65−70%に減らす。こうした食生活で、米国の疫学調査で明らかになっている長寿者の特徴である「低体温」「血液中のインスリン濃度が低い」「血中DHEA(ホルモンの一種)濃度が高い」体になるという。